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  1. 小野坂貴之
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2016年10月

綺麗で儚い記憶。

あれは今月の初めの深夜、肌寒さを感じ始める少し前。iPhoneさんの画面を割った。 蓋つきカバーを施して日々あれほど守っていたのに、新宿三丁目の路地の上、パリンと音を立てて割れたのだ。酔っ払った私の手から滑った瞬間、なぜかカバーが開きながらアスファルトへと落ちていく。まるでゆっくりと顔から奈落へ吸い込まれていくようだった。 半分覚悟して、半分願いを込めながらうつ伏せに落ちたiPhoneさんをこちら […]

筆を選ぶ。

自分で言うのもなんだが、私は字を綺麗に書くことができる。 幼き頃から書道教室へ通わせてもらい、誰に見られても読みやすい字を手に入れた。これは両親に感謝するもののひとつである。 私の通っていた書道教室では段位七段が最も高く、私が到達したのは六段だった。その当時は「まあまあいけてるんじゃないか」と思っていたのだが、学生時代のバイト先の「まるで印鑑のふちを思わせる鬼の丸文字」を誇った店長が、「俺、十四段 […]

言葉にならない。

たまに、ふと気づくとしゃべりながら家事をしている。それはもう随分長く分かっていた。 随時確認の意味合いもあるので、長くそのままにしていたのだ。 ところが今日、はたと気づく。 「これはこうしとったらええかいの」「あれせないかん」「これをあれしてこうしとったらええんちゃうんか」 主語も述語も名詞も動詞ですらも、その全てが「これ」と「あれ」で構成されていたのだ。 いかん。これはもう堕落である。「あれ」と […]