もう十五年ほど昔になるが、とある小さな映画に出演したことがある。当時、私の何を感じてどう思って声をかけてくれてくれたのかは分からないが、主演したのである。
(その監督さん、現在は海外映画祭で賞を受賞して着実に夢を実現してらっしゃる好人物だ)
さて、その撮影後、監督からいただいた本の名前が今回のタイトル「お楽しみはこれからだ」。名作と呼ばれる映画の名セリフをちりばめた本である。その中で紹介されているひとつに、最近やっと意味が腑に落ちてきた一節がある。
「ゆうべどこにいたの?」
「そんな昔のことは覚えていないさ」
「今夜会ってくれる?」
「そんな先のことはわからないさ」
ハンフリーボガードが語る、映画「カサブランカ」での一節である。読んだ当時、「プレイボーイがごまかしやがって」のような印象しかなかった。
しかし四十路をとうに過ぎた今、日々少しずつ考える間になんとなく腑に落ちてきたのは「約束は難しい。だってすぐこの後の運命すらわからないのだもの」という感覚。
無責任に聞こえるだろうか。でも反面、「先行き不透明だから、でも楽しいこともあるんじゃん」と勝手に読み解くこともできるのだ。(ここまでを読み返して見たが、うむ、言葉って難しいね)
さて。
今日、下北沢で舞台を観劇してきた。SPIRAL MOON the38th session「ピース」(脚本 かわしままさき・演出 秋葉舞滝子)である。うっかり、だが、客席でちと泣いた。泣きながら思い出したのが「お楽しみはこれからだ」という本のタイトルと「そんな先のことは分からないさ」という台詞である。いや、ええ舞台やった。
で、実は宣伝になるが、土曜夜の一回限り、私もワンシーンに出演する。
舞台のタイトルどおり、ピース一片一片に共感しながら、ピースがはまってひとつの物語に繋がる瞬間を、ぜひ皆さんにも共有したい、と感じている今日この頃である(宣伝)。