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  1. 小野坂貴之

人はほら、きっと逞しい。

先日の夜の話。

iPhone片手にソファへ寝っ転がり、つけっぱなしにしていたCATVの映画専門チャンネルを眺めていると、B級確実なタイトルの映画が始まってしまう。

「メガ・パイソン&ギガント・ゲイター」。

巨大な蛇とワニが登場する話である。やはりB級感満載で「CGがとっても雑な上、蛇とワニが巨大化しすぎ」「主演らしいオバサン二人がヒステリックに喜び嘆き叫んで暴れる」「君子危うきに近寄らず、ならぬ、お馬鹿近づいてすぐ食われる」など枚挙に暇がない。

うむ。映画の話はやめておこう。書き残しておきたいのはそこではない。主演のオバサンのひとりが、なんとティファニーだったのだ。80年代後半に一世風靡した、アメリカンアイドルである。

80年代後半といえば、私はまだ中学生。当時はまだ名称のなかった「中二病」の同級生に囲まれ、「ティファニー、イイよね。歌、イイよね。何言いよるのか、よーわからんけど」という「洋楽聞いてると俺ってカッコいい風かも病」を発症した一人に教えてもらったものだ。

この症状は、少し前の世代で言うところの「ナウでヤング」だったのだろうが、私の世代ではやや死語だった気がする。当時の私の周りには、前述の「洋楽病」の他「BOOWY病」「永吉病」が大半を占め、これが「中二病三大疾病」であった。ちなみに私自身は、南野陽子とシンディ・ローパーとSing Like Talkingの大ファンである。

余談はさておき。

可憐で健康的なアメリカンアイドルであったティファニーは、ワニのように画面の中を暴れまわり、そして、ありえないほど巨大なワニに喰われて散った。

衝撃である。いやその、悲しいのではない。その変貌ぶりの、快活にやりちぎっている様に、生きていく逞しさを垣間見れて嬉々としたのだ。

ああ、なんとも潔く明るいではないか。