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  1. 小野坂貴之

悲しかった話。

平日の何回か、私はオフィスへ弁当を持っていく。前日の夕飯のオカズを翌日のランチのために少し分けて残し、夕飯終わりに弁当箱に詰め、冷蔵庫に入れておく。炊飯器に残る、少し多めに炊かれた白飯は、近いうちの晩御飯用にタッパーケースへ詰め、こちらは冷凍庫へと保管するのだ。

たしか、先週のことである。

朝にオフィスへと出かける直前、冷蔵庫から弁当箱を取り出し、別に用意した野菜サラダと一緒に黒布のランチケースへ。満員電車につぶされることもなく無事についたら、昼までの間はランチケースは袖机の中へ。

さて、そして昼を迎えた時である。

ランチケースから弁当箱を取り出し、オフィスに備えられた電子レンジで温める。その間、デスクの上を綺麗に片付け、サラダを取り出し、ランチの用意をする。電子レンジから弁当箱を取り出し意気揚々とデスクへ戻る。着席してから温められた弁当箱の蓋をゆっくりと開いて目を疑う。

ないのである。ホカホカの白飯しかないのである。オカズがいないのである。

その時、ハッと気がついた。実のところ、我が家の弁当箱と保管用のタッパーケースは同じもの。そうだ。完全に入れ違えてしまったのだ。なんてことだ。

綺麗に整えたデスクの上に広がるは、ホカホカの白飯と野菜サラダ。斜め上から覗くぱっと見ためのその淡白さ加減に、どうこれを食い始めれば良いのか途方にくれてしまった。