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  1. 小野坂貴之

だって、しょうがないじゃない。

先日、上海ディズニーランドの登場した見慣れぬキャラクターを某局ニュースが「中国風にアレンジされたディズニーにはいないキャラクターもパレードに登場」と伝えていた。どうやら間違いで正真正銘のディズニーキャラクターだったらしいが、このニュースをタイムリーに見ていた私は「やっぱりマガイモノも出ちゃうんだ」と思ってしまった。

だってしょうがないじゃない。中国の遊園地と云えば、世界のどこかの何かに似たような粗末な着ぐるみが、十把一絡げで登場しちゃうのだもの。「これが白でも他が黒だろう」とうがった眼差しでどうしてもみてしまっちゃうじゃないか。

さて。この間、自分の身におこった話がある。

ついひと月ほど前だろうか。ぼけた寝起きの頭のまんまMacをパチパチしていた私は、友人から届いた案内から、格安ブランドサングラスを購入してしまう。「ひさびさサングラスもええよなぁ」「◯イバンじゃないか、ワクワク」寝起きに加えて妄想していたのもいけなかったのだろう。購入した直後に「これは詐欺サイトじゃなかろうか?」とハッと気づく。

届いた案内もよく考えたら怪しいし、慌てて特定商取引法の記載やら会社情報やら探してみるもサイト内に記述はなく、おかしな日本語ばかりで調べれば調べるほど、もう、ダメな感じである。そこから急いでカードを停止し、ため息と後悔の連続だったのは言うまでもない。

ところが、である。ある日戻ってくると。中国の何やら分からない住所から荷物が届いているではないか。「ま、まさか?」サングラスなぞ諦めていたのに、ちゃんと届いちゃったらどうしよう、などと訳の分からぬことを考えながら封をあける。

「こ、これは。」

手に取ると、よくできたマガイモノであった。軽い。重さじゃなくて見た目が明らかに軽い。ちとごめんなさいよ程度に、フレームに「レイ◯ン」のプラスチック製ブランドマークが貼られている。

笑ってしまった。だって、騙されたと思ったものが届いたのだもの。いや、騙されてはいるが、まさか届くと思わないではないか。そして、マガイモノにしては出来が良いのだ。

ただ、普段は使えないだろう。「レ◯バンのサングラスだ」と日常で使った瞬間に、どこぞの遊園地のキャラクターのようにより黒い存在へと進化してしまいそうだ。そんな自分を想像するに、寂寥感が溢れていたたまれなくなる。

そうだ。いつか舞台の小道具として使おう。舞台照明とは不思議なもので、その瞬間、偽物を本物へと変えてしまう力があるのだ。

ということで、いつか何かで使われる役割を見つけたサングラスは、マガイモノの光を放ったまんま、部屋の水屋ダンスの上に放置され、雌伏の時を待っている。